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エッセイ【国東が呼ぶ】特別篇 ナカツ・カクテル・ナイト 返信数: 0件
名前:spica1004  2025/08/28(木曜日) 22:34:06 
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鏡子さんは、グルメではない──
旅行だからといって、そこにしかないものを食べたりとかはしないという。

だから、大分県発祥のファミレス「J」に車を入れた。
僕はとりあえず、中津名物・唐揚げ定食にした。
鏡子さんはミックスフライ定食だったか。

「ルートイン」にチェックイン。
部屋に荷物を置いて、ロビーに戻ると、鏡子さんは無料セルフのコーヒーを飲んでいた。
カードーキーはフロントに預けた。
もちろん、門限はない。

中津は安全な店ばかりだが、店の前にプライスリストの立て看板があるから、なお安心だ。
チャージ500円 ドリンク700円〜

オーセンテック(正統派)・バーは、一回経験すれば、どこへ行っても大丈夫だ。

「いらっしゃいませ」

どこに座る?
マスターが指示してくれる。
カウンターの端は常連客の場所であることが多い──お約束はそれだけだ。

軽く挨拶したら、すぐにオーダーする。

「ベースはジン。ロングで」
「さっぱり系で?」
「そうです。よろしくお願いします」

鏡子さんは、
「封を切ったコアントローがあれば、トニックウォーターでいい具合に」
「かしこまりました」

ユニークなオーダーだが、バーテンダーが戸惑うことはない。どこまで甘口になるだろう。

乾杯は、グラスを当てない。
繊細なカクテルグラスで「カチッ」はタブーとされているから、タンブラーでも、それにならった。

ロングのカクテルは氷が入っているから、温くならない。スタイルとしてゆっくり楽しむ。

バーテンダーはプロだから、客が会話を欲しているかを感じとれるというが、
今夜は、僕のほうから話を振ってみた。

長崎から来ました、と言うと、去年の夏に私も行きました、と返してくれた。

酒場では「3S」を話題にするのはタブーだが、マスターは選挙が近かったから「政治」に触れ、鏡子さんは国東の魅力を「宗教」として語った。
あと一つの「S」に触れるほど、僕はダメダメではない。

二杯目は、「ウオッカトニック」をオーダーした。鏡子さんは何だっただろうか。ロングのスタンダードだったとは思うが。

最近、バーでのタブーが一つ増えた、と鏡子さんが言った。
ネットの記事に、「珍しい酒壜があっても、無断で写真を撮らない、触らない」という項目があるという。 

珍しい壜ねぇ・・・・・・哺乳瓶入りの酒があったなぁ。
僕の言葉に、マスターは上品に笑った。

もう一杯飲みたい、というところで「チェックお願いします」というのがスマートだ。

さっと立ち上がる。
たいした距離ではないが、女性をエスコートしてしっかり歩けることをさりげなく示した。

「では、また」
「おやすみなさい」
  
高架駅である中津駅を、下り電車が発車するところだった。

大都会北九州市を発つ電車の終電は遅いのだ。

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