|
・ 応暦寺は、「いいところ」にある。
「ここまでの風景が好きなのよね」
鏡子さんが窓の外ばかり見ているから、僕は車速を落とすしかない。
車は下の道に置き、坂を上っていくと、「電話をかけているような仁王像」の歓迎をうける。
本堂は資料館のようだ。
ユニークな石造物が並べられている。
マリア観音なんて、ここにしかないかもしれない。
一番の寺宝は、「灯明石(像)」だという。
空洞の太鼓のようなもの──ここに火を点す──を背負う比丘(びく……男子の出家者)と、それを後ろからサポートする比丘。
ぜひ、実際に見てほしい。 その二人の表情を見たら、微笑まない人はいないはずだ。 ▽ 少し奥山に入れば、「堂の迫磨崖仏」がある。 意外と近いと思う。 行ってみればわかるが、ここもユニークな祀りかたをしている。
「言葉にできるなら……」 と鏡子さんがつぶやいた。
この寺を、この風景を、この歴史を、 つまり、この魅力を、 言葉にできるなら…… もっと多くの人の「心が還る場所」になる。
鏡子さんだけのものにするなんて──そうだ。許されるはずがない。
──── ────
|